「房枝、早く下りよう」
と、うわごとのようにいった。
「え、下りるの」
房枝が、黒川のことばをあやしんで、といかえしているとき、座席に、例の外人の婦人が入ってきて扉をしめた。それから、大きなからだの男の外人は、運転台にのって、扉をばたんとしめると、エンジンをかけた。
「おい、房枝。早く下してくれ」
「まあ、あなた、興奮してはいけません。しずかになさい」
房枝が、なにかいおうとしたが、その前に婦人がひきとって、黒川をなだめた。
この二人の外人は、だれであろうか。ふしぎともふしぎ、運転台にいるのは、背広姿になってはいるが、雷洋丸にいたときは牧師《ぼくし》の服に身をかためていた師父《しふ》ターネフであった。
それから若い婦人は、これも雷洋丸にのっていたターネフ師父の姪《めい》だといわれるニーナであった。
だが、このときは、怪我をしている黒川は、そんなことはしらないし、それから、二人を雷洋丸の上ではしっていた房枝も、まさかこんなところで二人にめぐりあおうとは思っていなかったので、ただもう黒川団長の容態《ようたい》ばかりを気にしていて、二人がだれであるか、気がつかなかった。
師父タ
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