ーネフの運転する自動車は、ビル街へ、さっと明るいヘッド・ライトをなげながら走りだした。
 車が走りだすと、とたんに房枝は、帆村探偵とトラ十のことを思いだした。
 あの二人は、どうしたろう。まだ、そのへんで、組んずほぐれつの大格闘をしているのではなかろうか。
 房枝は、座席から腰をうかせて、走り行くヘッド・ライトの光を追った。もしやその光の中に帆村とトラ十の姿が入ってきはしまいかと思ったので。
 ところが、それからしばらくいったところで、師父ターネフは、ハンドルを切って、あるビルの角を右へ曲ろうとした。
「あっ、あぶない」
 ターネフは、思わずおどろきのこえを発して、ハンドルを急に逆に切った。車体は、地震のようにゆれ、そしてもうすこしで、左がわのビルにぶつかりそうになった。が、そこでターネフは、またハンドルを右に切りかえたので、車は歩道の上へのりあげたものの、がたと一ゆれしてうまく、道路の上にもどることが出来た。
 房枝は、そのさわぎをよそに、今しも車輪にかけられそうになった格闘中の二人の男に、全身の注意力を送った。
 道のまんなかで、組打をやっているのは、たしかに帆村とトラ十だった。ト
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