るものか」
と、おどろいたトラ十は、満身の力をこめて、帆村のからだを左に右に、ふりとばしにかかった。
「あっ! しずかにせんか」
といったが、このときトラ十は、帆村の腕をほどいて、ぱっと往来へにげだした。
深夜《しんや》の怪人《かいじん》
「あっ、トラ十がにげた」
「帆村さん。しっかり」
黒川と房枝は、こえをたててさわいだ。しかし二人とも帆村に加勢することは出来なかった。二人とも、手をしばられ、足首のところを固く結ばれているから、そろそろ歩くのはともかくも、走るなどということはできない。せっかくのこんなときに、帆村に力をそえることができなくてと、ざんねんに思いながら、二人は階段を下りようとした。
「あっ、あぶない」
「あれっ」
足は結ばれているし、気はせいている。しかも二人が、階段をいそいで下りようとしたものだから、二人のからだが、どんとぶつかった。あっといったときには、二人は、もろに足をふみはずして、下へころげおちた。
「うーむ」、
房枝は、黒川のうなるこえをきいたが、次の瞬間、彼女も頭がぼーっとしてしまった。階段をころげた拍子に、運わるく脾腹《ひばら》をうったも
前へ
次へ
全217ページ中140ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング