した。電灯をつけろ」
「停電で、飯がたべられるか」
「電灯料の支払いが、たまっているのだろう。ざまをみやがれ」
やひ[#「やひ」に傍点]なまぜっかえしに、一座は、たちまちどっと笑いくずれた。皿をたたく者がある。ソースのびんをひっくりかえした者がある。だれやらマッチをすったものがあるが、とたんに、ふき消されてしまった。
「ただ今、怪しい飛行機が近づきました。明りを消してください。マッチをすってはいけません」
室内の高声器《こうせいき》から、とつぜん警戒警報が伝えられた。
「それみろ! もう、マッチをすっちゃ、いけねえぞ」だれかがさけんだ。
そのうちに、丸窓が、がたんと閉まる音がきこえた。
「もういいか」
「一番、二番もよろしい」
「五番、六番もよろしい」船員たちは、おちついて、暗闇《くらやみ》の中に、こえをなげあっている。
「ようし。それで全部、窓は閉まった。予備灯点火《よびとうてんか》!」
「おうい」釦《ボタン》が、おされたのであろう。五つばかりの、小さい電球に明りがついた。
人々は、はっと、よろこびのこえをあげて、一せいに、明りの方に、ふりむいた。
そのとき、房枝も、明りを
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