ふりむいた。
「すぐ灯火管制《とうかかんせい》にうつらねばなりませんが、こうだしぬけの警報では、ちょっと時間がかかりますが、いかが?」
「ただちに、電源の主幹《しゅかん》を切って、消灯《しょうとう》だ!」
船長は電文を見終って、はっきり命令を出した。
「えっ、主幹を切りますか」
「早くやれ!」船長のはらは、すわっていた。
これから消灯または遮光《しゃこう》の命令を出して、おおぜいの手で、船内の方々をくらくさせていたのでは、おそくなる。ことに、海を航行している汽船は、空中から、すこぶる見えやすい。船長の考えとしては、船の安全のために一秒でも早く灯火管制をやりとげるためには、こうするのがいいと思ったのである。
命令は、ただちに、発電室に伝えられた。
「電灯用主幹、全部開放!」
あっという一瞬間に、船内の電灯は、全部消えてしまった。どこもかしこも、たちまち、まっくらやみだ。
ただ機関室などの大事なところは、夜光塗料が、かすかに青白く光って、機械の運転に、やっとさしつかえのないようには、なっていた。
食事半ばの、三等食堂などは、文字どおり、暗黒の中にしずんでしまった.
「あっ、どう
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