》へと変り、あられもない「白蛇のお由」と自分から名乗って伝法《でんぽう》を見習うようになったが、若いに似ずよく親分の世話をして、執念深く窺《うかが》いよる男共は手痛い目にあわされるという評判が専《もっぱ》らであった。
然し魔は何処に潜《ひそ》んでいるか計り知れぬ。それ程気の強いお由が、この正月頃から臆病《おくびょう》な大学生山名国太郎にすっかり魂を打ち込んでしまったのだから――。二人の甘い秘密は、幸《さいわ》い今日まで親分にも知れず、数々の歓楽《かんらく》を忍ばせて来たが、ここにもやっぱり悪魔は笑っていたのだ。若《も》しお由の死から国太郎との秘密が知れたが最後、深い中年者の恋の遺恨《いこん》で、どんな惨忍《ざんにん》な復讐《ふくしゅう》が加えられることであろう。
生きた心地も無いこの哀れな青年を前にして、技手は全く途方にくれたようであったが、一方空っぽにして来た変電所の事も気になるらしく、咄嵯《とっさ》に何《ど》うにか、後始末の手段を考えてくれた。
「ね君、今は何うしてお由さんが死んだのか、誰に殺されたのかなんて事は研究している場合じゃ無いよ。何より君自身の体を心配する必要があるん
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