忽《たちま》ち土地の警察は言うまでも無く、警視庁|強力犯係《ごうりきはんがかり》の大問題となって、時を移さず血眼の大捜索が開始された。お由の屍体は直ぐに大学病院に運ばれて解剖に附《ふ》されたが、其処からは何等犯罪的な死因は得られず、或いは一種の頓死《とんし》ではないかとさえ言われたが、屍体|損壊《そんかい》の点から見ても、矢張《やは》り他殺説の方が一般に主張された。
そこで屍体は一時亭主の吉蔵に下げ渡され、今戸の家へ親戚一同が集ってしめやかな通夜《つや》をする事になったが、其の席上で端なくも意外な喧嘩が始まってしまった。というのは、恋女房の棺《ひつぎ》の横に坐って始終腕組みをしていた吉蔵親分が、つと焼香に立った喜多公を見て、悲痛な言葉を浴びせたに始まる。
「喜多公、よく覚えて置けよ。殺された女の恨《うら》みは七生|祟《たた》るっていうからな」
「何んですねえ、親分。冗談じゃねえ」
「なに! 女房が殺されたってのに、冗談口を利く亭主が何処にある。てめえの為を思うから言ってやるんだ。後世《ごしょう》の事を思ったら、今の内に――」
「親分! 乙に絡んだものの言い方をしやすね」苦笑いをしてい
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