が隆々《りゅうりゅう》たる腕力に自信を置いて、樫田武平の華奢《きゃしゃ》な頸筋《くびすじ》を締めつけようと襲いかかった。と、早くも吹矢は由蔵の咽喉笛深くグザと突刺さったのであった。――急所を殺《や》られてそのままこと断《き》れた由蔵の屍骸《しがい》を見捨てて、樫田武平は怖ろしい迄緊張した気持で変装に取かかった。かねて目論《もくろ》んで置いた通り、彼は咄嗟《とっさ》の間にも順序を忘れずに、女装の鬘を被った。
そして再び由蔵の部屋へ降りて、由蔵の着衣を脱ぎ捨てると、彼は裸体のまま右手にはフィルムの入った黒い風呂敷を提《さ》げて、大胆にも梯子を伝って釜場に降りた。そして女湯の扉口《ドアぐち》へ行こうとした、ちょうどその時彼は其処で湯屋の女房とばったり鉢合《はちあわ》せをしたのみか、ちょっと見咎《みとが》められたのであった。さすがに、これには彼もぎょっとしたが、いかにも柔い嫋々《なよなよ》しい彼の体は、充分に心の乱れた女房の眼を欺瞞《ぎまん》することに成功した。
そして、彼は、素早く女湯の扉口《ドアぐち》から中へ入って、自分が殺したお照の屍体の側を過ぎて脱衣場へやって来た。それから先、お照
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