電気風呂の怪死事件
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)井神陽吉《いがみようきち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)近頃|大流行《だいりゅうこう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)むっ[#「むっ」に傍点]
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井神陽吉《いがみようきち》は風呂《ふろ》が好きだった。
殊《こと》に、余り客の立て混《こ》んでいない昼湯《ひるゆ》の、あの長閑《のどか》な雰囲気《ふんいき》は、彼の様《よう》に所在《しょざい》のない人間が、贅沢《ぜいたく》な眠《ねむり》から醒《さ》めたのちの体の惰気《だき》を、そのまま運んでゆくのに最も適した場所であった。
それに、昨日今日の日和《ひより》に、冬の名残《なごり》が冷《ひ》んやりと裸体《からだ》に感ぜられながらも、高い天井《てんじょう》から射《さ》し込《こ》む眩《まぶ》しい陽光《ひかり》を、恥《はずか》しい程全身に浴びながら、清澄《せいちょう》な湯槽《ゆぶね》にぐったりと身を横《よこた》えたりする間の、疲れというか、あの一味放縦《いちみほうじゅう》な陶
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