ゅう》にあった刑事連もひとしく同意見を陳《の》べるに到った。
だが、何にせよ、その樫田武平の身柄を捜査してみなければ、或は現場不在証明《アリバイ》などの懸念《けねん》もあるので、色めき立った刑事連は、赤羽主任の命を待つものの様にその面を仰《あお》いだ。
と、赤羽主任は、何故か悠然《ゆうぜん》と構えて急ぐことを欲《ほっ》せぬもののようである。
「非常線は張ってある。本署へ行けばきっと捕っているに違いないよ!」
先刻《さっき》までの陰鬱《いんうつ》そうな顔色にひき代えて、また何と云う暢気《のんき》さだろう!
3
だが、赤羽主任の推定が真実《ほんとう》であったことは、一同が向井湯を引上げて本署へ立ち帰った時に判明した。
「主任殿、御苦労さまでした。非常線にひっかかった怪しい奴は、みんな留置所《りゅうちじょ》へ打《ぶ》ち込んであります。そして、たった一人|全《まった》くおかしな奴がいるんです……」
一行の帰署《きしょ》を待ち構えていたもののように報告する一人の刑事の言葉を聞いて、赤羽主任はおっ冠《かぶ》せて云った。
「……束髪の女装をした奴で、名は樫田武平とね、然《
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