、ありました。何だか、おかしなものが出ましたぜ!」
「ふむ、そうか、何だね?」と主任の声。
「ま、ちょいと来て御覧なさい!」
 刑事は頬の辺《あた》りを変に歪《ゆが》めて、いやらしい笑いを見せた。赤羽主任は云われるままに梯子を昇って行ってみた。
 室の中央に投げ出された柳行李《やなぎごうり》の中に、一杯女の裸体写真が詰《つ》まっていたのだ。それは主にサロンの安っぽい印刷になる絵葉書や、新聞雑誌の切抜らしいものばかりであったが、更にその奥の方からは、独逸《ドイツ》文字の学術的な女の裸体研究書などが出て来た。が、それにも拘らず、目的の女の着衣は部屋の何処にも見当らなかった。
 然《しか》し、斯《こ》うなると、由蔵に就《つい》ても余り軽々しく考えられなくなって来た。何故なら、それらの持物でも判るように、由蔵は立派な変態性慾者であるに違いなかったからである。
 暫くして、又刑事は押入の隅から望遠鏡のサックを曳《ひ》っ張り出した。――赤羽主任の頭は愈々《いよいよ》混乱して来るのであった。……
 と、其の時、釜場へやって来た人間が、やあと声をかけた。それは、赤羽主任のよく知っている警察医《けいさつ
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