天井裏へ抜けて出た。
 懐中電灯の光芒《ひかり》が縦横に飛び動いて、四辺《あたり》の状態をそれぞれの眼に瞭《はっき》りと映して呉れた。そこは、上って見ると、こうも広々としているものかと思われる程、ゆったりとした天井裏であった。頑丈な棟木《むねぎ》が交錯《こうさく》して、奇怪な空間を形作《かたづく》っている。と、十間ばかりの彼方に、正《まさ》しく俯臥せに倒れている屍骸が認められた。
 主人の証言によって、それは些《さ》の疑いもなく由蔵の屍体であると判明した。
 赤羽主任は、殆んど迷宮に途惑《とまど》った人間のように、甚《はなはだ》しく焦立《いらだ》ちながらも、決して検証を怠《おこた》らなかった。
 由蔵の屍体は、女湯の惨殺体と同様に、咽喉笛の処に鋭い吹矢が立っていた。そして、四辺《あたり》一面の血の海は、次々と発見された事件の衝動に麻痺《まひ》された一同の心に、只燃えつつある絨鍛《じゅうたん》の如くに映った。
 しかし、次に、一同は異様なものの落ちていることを発見した。それは筒状《つつじょう》の望遠鏡と、もう一つは脚のない活動写真撮影機であった。更に、犯人が兇行に使用したに違いない吹矢や
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