った時、ひょいとした感じで、ちょっと不安を覚《おぼ》えたので、訊《たず》ねてみたことがあった。
「どうだい、この電気風呂って奴は、入浴中に人間が死ぬ様なことはないものかね?」
すると、茂生は、何か他のことでも考えていたのか、はっとした様な態度で、しかしこう答えたものだ。
「さあ、大体大丈夫だがね、しかしどうかした拍子で電気が強くなると、心臓をやられることもあるだろうね。人間の中でも電気に感じ易《やす》い人と、感じの鈍《にぶ》い人とあるものだからね。同じ人間でも身体の調子によって、感じ易い日と、感じにくい日とがあるものだよ。とにかく、疲れ過ぎたり、昂奮《こうふん》していたり、酒を呑んでいたりして心臓が弱っている時には、電気風呂など止《や》めた方がいいよ。そりゃ普通はそんなこと滅《めっ》たに、いや絶対といってもいい位、ありゃしないがね。また死ぬかも知れないような危険なものを、許可しとく筈があるまいじゃないか、まあ、安心していいだろうよ」と。――
だから、今日も、彼は例日《いつも》のように、いや、むしろ今日は進んでこの電気風呂へやって来たのだった。というのは、前夜、銀座あたりを晩《おそ》
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