そこから、ポタリポタリと血潮が、青白い女の肉体に落ちるのではないか?
打ち続く怪事に、人々の面は、今にも泣き出しそうに歪《ゆが》んだ。
赤羽主任は、唇をヒクヒクと痙攣《けいれん》させ、顴骨《けんこつ》の筋肉を硬《こわ》ばらせながら、主人に訊ねた。
「あの天井裏へ案内して呉れ! 早くだ、何処から昇るんだ!」
が、主人は全く当惑《とうわく》した面持で躊躇《ちゅうちょ》した。
「へッ、ど、何処から上ったもんでしょうかな?」
「自分の家じゃないか、落ついて考えるんだッ!」と、赤羽主任は、焦れったそうに、低いながらも力強く詰問《きつもん》した。
「それが、あそこへは一度も昇ったことがありませんので……。ま、とにかく裏梯子をかけてみましょう。どうぞ、こちらへ」
周囲の人々の眼に送られて、両人が奥へ通う扉口《とぐち》を出ようとした時、刑事の一人が慌《あわた》だしく駆け込んで来た。
「主任、由蔵の室《へや》を取調べましたが、由蔵の姿は見当りません。色々調べてみましたのですが、押入の天井の板が少し浮いていたほかに、別に異常はありません。で、押入の天井板を押しのけて上ってみますと、どうやら此の浴場
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