鳩です。
伝書鳩第一号も、前に電気鳩にひどい目にあっていたので、わざと森や林の中をぬけたり、きゅうに下にまいおりたりなどして、一生けんめいににげて行きました。
しかし、おそろしい電気鳩のくちばしをのがれることはできず、つばさはきずつけられ、羽根はぬけ、一方の目はつきやぶられてしまいました。それでも、伝書鳩第一号はがまんをして、とうとう自分の鳩舎にたどりつきました。
まっさきにそれを見つけたのは、るすをしていた高一の妹ミドリです。
「あらあら、鳩があんなになって……」
ミドリは、はしりよって鳩舎の上に、つばさをひろげたままたおれている第一号を、そっとおろして、胸にかかえてやりました。
そのとき上の方で、くわっくわっとあやしいこえがきこえました。
第一号はそれをきくと、くるしい中からくうくうとないて、ミドリにあぶないから用心なさいとしらせました。ミドリがすぐに家の方にかけださなかったら、電気鳩のために、どんなひどいけがをしたかわからないのです。
「ミドリちゃん。なにをさわいでいるの」
軍服すがたの良太《りょうた》おじさんが顔をだしました。
血にそまった鳩のあしから、高一のは
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