た。
 りんごはうまいうえに、ねだんもたいへんやすいので大人気です。
 ところがとつぜん、高一はうしろから大きい手で、かたをつかまれました。
「こら、小僧。口がきけないふりなどをしているが、あやしいやつ、お前は日本のスパイだろう」
 高一が、ふりかえってみると、りっぱな敵の将校でした。それは、トーチカの隊長だったのです。
 高一は、わざとかなしい顔をしてあやまりましたが、隊長は、しょうちしません。そして、高一をひきずるようにして、トーチカの中の自分のへやにひっぱってゆきました。りんごはかごからおちて、そこらじゅうにごろごろところげました。
「さあ、こっちへはいれ。しらべてやる」
 高一はもうこれまでと思い、腰の袋をあけて電気鳩をだしました。そして、りんごのかごのなかにかくしてある、電気鳩をうごかすきかいをひねりました。
 電気鳩は、ものすごい羽ばたきをして、隊長の頭の上をぐるぐるまわりだしました。
「おや、へんな鳥がとびだしたぞ」
 隊長は、はらをたてて剣をぬくと、電気鳩にきりつけました。
「あっ――」
 ぴかり、といなびかりがみえたかと思うと、隊長は、その場にたおれました。電気鳩のだ
前へ 次へ
全54ページ中50ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング