た。
りんごはうまいうえに、ねだんもたいへんやすいので大人気です。
ところがとつぜん、高一はうしろから大きい手で、かたをつかまれました。
「こら、小僧。口がきけないふりなどをしているが、あやしいやつ、お前は日本のスパイだろう」
高一が、ふりかえってみると、りっぱな敵の将校でした。それは、トーチカの隊長だったのです。
高一は、わざとかなしい顔をしてあやまりましたが、隊長は、しょうちしません。そして、高一をひきずるようにして、トーチカの中の自分のへやにひっぱってゆきました。りんごはかごからおちて、そこらじゅうにごろごろところげました。
「さあ、こっちへはいれ。しらべてやる」
高一はもうこれまでと思い、腰の袋をあけて電気鳩をだしました。そして、りんごのかごのなかにかくしてある、電気鳩をうごかすきかいをひねりました。
電気鳩は、ものすごい羽ばたきをして、隊長の頭の上をぐるぐるまわりだしました。
「おや、へんな鳥がとびだしたぞ」
隊長は、はらをたてて剣をぬくと、電気鳩にきりつけました。
「あっ――」
ぴかり、といなびかりがみえたかと思うと、隊長は、その場にたおれました。電気鳩のだ
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