た。
「兄ちゃん、どこへにげるの」
「船にのって、すこしでも早く、この島からにげだすのだよ。海へ出れば、きっとどこかの船にであい、たすけてくれるよ」
 くらい海岸へでてしらべてみますと、ボートが二そうありました。さいわい番人もいません。高一にはなかなか動かしにくいボートでありましたが、それでも一生けんめいに海の中におろし、そのひとつにのりこみ、もう一そうは、うしろにひっぱってゆくことにしました。
 高一は「地底戦車」を発明したお父さまが、敵国からにらまれていることがしんぱいでなりません。それで、死にものぐるいで、くらい海にこぎだしました。
「兄ちゃん、もうひとつのボートはいらないのでしょう。おいてくればよかったのにねえ」
「いや、のこしておけば、わる者どもが、それにのっておっかけてくるじゃないか」
 高一は、いつもあわてないで、よく考えていました。やがて、ボートの一つは船ぞこのせんをぬいて海の中にしずめてしまいました。これで、スパイ団長をはじめわる者どもは、無人島に島ながしになって、どこへもゆけなくなったのです。やがて気がついて、さて、おどろくことでしょう。しかし、あのわる者どもが、そ
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