と、おどろくではありませんか、なかには、見おぼえのある電気鳩がはいっていたのです。
「あっ、電気鳩だ。なぜこんなところにはいっているのだろう」
 目のぴかぴかひかる電気鳩です。人がさわれば、電気がつたわって死ぬ電気鳩です。そして、スパイ団長が船のなかで行方をさがしていたその電気鳩です。
 きっと、なにかのひょうしで、このたるのなかへまよいこんだとき、うんわるく、ふたがぱたんとしまって、でられなくなったのでしょう。
 電気鳩はどうかしたらしく、足でたつこともできず、ぱたぱたとつばさをふるわせるばかりで、元気がありません。高一は安心して、電気鳩を、たるの中から棒きれでそっとだしてみました。
「へんだなあ、あんなにあばれた鳩だったのに」
 高一は、首をかしげました。
 高一は、思いがけなく電気鳩を、とりこにしたので、たいへんうれしく思いました。しかし、このままにしておいては、いつスパイ団にとりもどされるかもしれないと思ったので、高一は、鳩をもとどおりたるのなかへいれたのち、海岸の砂はまに、大きな穴をほり、そのなかにうめてしまいました。
「こうしておけば、スパイ団にみつかるしんぱいはないだろう
前へ 次へ
全54ページ中36ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング