高一は元気をだして、うら山にのぼってみました。そこへあがると、きっと村かなんかが、みえるにちがいないと思ったからです。
 ところが、うら山にのぼってみておどろきました。村が見えるどころか、ここはいっけんの家もない小さな無人島(人のいない島)だったのです。
「無人島へながれついたとはよわった」
 と、高一はひとりごとをいいました。
 そしてなおも、あたりの海面を、しきりにみまわしていましたが、
「あっ、ボートみたいなものが二そう、こっちへこいでくるぞ」
 たしかにボートです。大ぜいの人が、ぎっしりのっているようです。
 高一は、おういと手をふりかけましたが、いや、まてまて、もし、わるいやつらの船だったらこまると思ってみあわせました。
 やがて、ボートは波うちぎわにつきました。どやどやと船からおりてくる人をうら山のかげから見ていた高一の目は、きゅうにかがやきました。
「やあ、ミドリがいる!」
 ミドリばかりではありません。
 そのそばには、あのにくいスパイ団長もいました。
 どうやら、れいの貨物船は、日本軍艦の砲弾にあたってしずんだようすです。だからわる者たちは、ボートにのってにげて
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