がついたときには、たるはしずみもせず、波のまにまに、ただよっているようでしたが、体はぐったりつかれて、ねむくてしかたがありません。
無人島
それからいく時間たったのか、おぼえていませんが、高一は、ねむりからさめました。
「おや、海の中にゆられゆられていたと思ったのに、これは、いったいどうしたんだろうなあ」
まったくへんなことでした。高一は、やはりたるの中にとじこめられているのにたるはゆれもせず、じっとしているのです。
「これはたいへんだ」
高一はたるのそとに、なにか音でも聞えはしないかと耳をすましましたが、なんの音も聞えません。そこで、大決心をして、たるのふたを力まかせにおしました。
ふたは、ぽかりとあきました。高一はたるの中から首を出しました。
「あっ、海岸だ!」
嵐はすっかりおさまり、朝日はまばゆく海上にかがやいていました。あたりはまっくろな砂が、いちめんにある美しい海べですが、うしろには、けわしい岩山がそびえていて、おそろしげに見えます。
「ここはどこだろう」
高一は、たるのなかから出て、めずらしげにあたりをながめました。まったく見たこともないところです
前へ
次へ
全54ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング