艦へむけておそろしい電気鳩をはなすことはできません。
「おい気をつけろ」
とスパイ団長のどなるこえがします。
「電気鳩をつかまえるときは、ゴムの手ぶくろをはめていないと、電気にかんじて、大けがをするぞ」
つい団長は、だいじなひみつをもらしました。
ばさっとあみをふりまわす音だの、鳩の強い羽ばたきなどがいりみだれて、たるの中の高一の耳にきこえてきました。
「さあ、早く電気鳩をつかまえろ、そして日本の軍艦めがけてはなして、しずめてしまえ」
わる者たちはいよいよ大さわぎです。
そのうちに、どかあんと音がしたと思うと、どっと船ぞこに海水がはげしくながれこんできました。日本軍艦のうった砲弾が、船ぞこをみごとにうちぬいたのです。
とたんに、高一のはいっていたたるは、海水にのってすうっともちあがると、水のすごいいきおいで、かいだんのすきまから甲板にとびだしました。そのひょうしに、たるのふたは何かにぶつかって、高一が出るひまもなく、またもとのようにかたくしまってしまいました。そして、ごろごろころがっているうちに、ぼちゃあんと海中におちてしまいました。
高一は、目をまわしてしまいました。気
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