とともに、船ぞこにころがるたるのなかに、とじこめられているのです。このまま、汽船がうちしずめられると、高一は、海へおちて死んでしまうでしょう。
 そのとき、天下無敵に強い電気鳩を、あやまってにがしたスパイ団長などのわる者たちは、たるをおいてある船ぞこをしきりにさがしています。高一は、ふとひとつのうまい工夫を考えつきました。
 高一は一生けんめいで、いましめのなわから手をぬきました。ようやく、手がぬけると、こんどは力いっぱい、たるのふたを両手でつきあげました。三度、四度とやっているうちに、さすがに、かたくはまっていたふたも、ぎしりと音がして、すこしすきまができました。わる者たちは、わあわあさわいでいるので、その音に気がつきません。
「しめた。では、ここらでだましてやろう」
 と、高一がたるのすきまから伝書鳩アシガラをはなすと、アシガラはぱたぱたとびまわります。
「あっ、電気鳩がいたぞ」
「しめた。さあ、はやくつかまえろ」
 わる者たちは、電気鳩だと思いこんで、アシガラを大さわぎでおいかけました。
 計略がうまくいったので、高一はたるの中でおおよろこびです。こうしておけば、しばらく日本の軍
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