山の中に。
しかし、このできごとが、あやしい鳩のためにおこったとは、だれも気がつきません。
電気鳩
「ねえ、兄ちゃん。どっかのお家の鳩が、うちの鳩とあそびたいって、それでおりてきたのよ、ねえ」
「うん――」
高一はなまへんじをしました。だって、つかまえようとすれば、ゆびさきがぴりぴりしびれる鳩なんてあるものでしょうか。
そのときでした。飛行列車がついらくをはじめたのは。
でも、ずっとはなれた高い空の上のことですから、二人はあとで、村の人から話をきくまで、気がつきませんでした。
ミドリは鳩舎をあけてやりました。するとお家の屋根にとまっていた鳩は、大よろこびで鳩舎の中へかえってきました。
しかしそのとき、きょうだいは意外なことに気がついて、目をみはりました。
きょうだいのおどろいたのもむりはありません。十羽いた鳩が九羽しかいないのです。さあ、一羽はどこへ行ってしまったのでしょうか。きょうだいは血眼で家のまわりをさがすうちに、うらの竹やぶのなかに、つめたくなっている鳩の死がいをみつけました。
「かわいそうに。お前はどうして死んだの」
「これはきっと、あの電気鳩のせ
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