手をひっこめました。そのとき鳩は羽をふるわせて、急にくるりとむきをかえると、きみのわるい羽ばたきをして、さっと空にまいあがりました。が、そのとびかたのすばやいことといったら、まるで戦闘機が地上から、おおぞらへむかって、棒上《ぼうあが》りにのぼるのとかわりません。あまりのものすごさに、高一もミドリもあっけにとられて、あやしい鳩の行方《ゆくえ》をみおくっていました。
ちょうどそのころ、この村のうんと上空を一だいの大きな飛行機が、あとに三だいのグライダーをひいてとんでいました。それは、こんどあらたにつくられた三百人のりのすごい飛行列車です。あやしい鳩はおそれげもなく、その飛行列車にずんずんちかづいてゆきました。おどろいたのは飛行列車の三人の試験操縦士です。
「おや、あの鳩は、ちっともにげないぜ」
「かわいそうに、いまにはねとばされるぞ」
そういっているうちに、あやしい鳩は弾丸のように、その翼《よく》にぶつかりました。
「あっ、たいへん!」
たちまち翼はそこのところから、まっぷたつにわれ、飛行列車は黒いけむりをあげて、とんぼのようにもつれあいながら、地上についらくしました。五キロもさきの
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