下のはこんできた、たるをゆびさしました。
「いやだ。それよりもぼくの妹をどうしたんだ。はやく、ぼくをミドリにあわせてくれ」
「ミドリはお前より一足さきに船にのりこんでらあ。むこうへいってからあわせてやる」
「うむ、さては、妹もたるづめにされたのか」
「いや、たるにいれるのは、お前みたいなあばれん坊だけなんだ。さあはいれ」
高一は力およばず、とうとうたるにいれられました。
どこへいく?
高一のおしこめられた、たるは、まもなく、外にかつぎだされました。いったい、どこへはこばれてゆくのでしょうか。まっくらなたるのなかで、高一は、気が気でありません。
くう、くう、くう。
高一のおなかのへんで、ないているものがあります。それはもう一羽の鳩、アシガラでありました。高一がわる者のため、たるにいれられるすこしまえ、わずかのすきをうかがって、アシガラを上着の下へいれてかくしておいたのです。
そのうちに、たるは、どすんとかたいものの上におかれました。それから、つぎつぎに、どすんどすんと、ほかのたるがおかれるようすです。
やがて、がたんという音とともに、たるをのせたトラックは走りだ
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