って、くう、くうとなきたてます。鳩にも、主人の一大事がわかっていたのでしょう。
高一は、かわいい鳩に、なつかしげにほおずりをしてやりました。
しかし、いつまでもそうしていられないことを、よく知っていた高一は、体をかがめて、自分のズボンのうらのきれを口でくわえると、べりべりとやぶりました。そして、そのきれを、口うつしにハグロにくわえさせると、ぴいぴいぴぴいと口笛をふきました。
その、ぴいぴいぴぴいという口笛は、
「はやくお家におかえりなさい」
という鳩の号令だったのです。ですから、ズボンのきれをくわえたハグロは、さっきはいったばかりのあかり窓から、いさましく外にとびだし、高一の家へかえってゆきました。
ちょうど、家の前に高一の愛犬マルがいるのをみると、ハグロはその前に、くわえてきたズボンのきれをおとし、マルを案内するかのように、さきにたってとびました。
高一のいれられている穴ぐらの入口のところで、がちゃがちゃとかぎの音がし、いきなり入口の四角なあげぶたがあいて、にくいスパイ団長がはいってきました。
「やい小僧、いいところへつれてってやるから、このなかへはいれ」
といって、手
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