なぜ見世物のじゃまをしますか」
「だって、ミドリをかくしたりして……」
「まだ、じゃまをしますね」
というと、鳩つかいは、いそいでぶたいの幕をしめさせ、高一を、見物席から見えないようにしてしまいました。そして、いきなり鳩のかごの戸をあけました。そのとたん、鳩は、すごいいきおいで、高一めがけてとびかかりました。まるで電気鳩そっくりです。
「あっ」
と、おもったときはもうおそく、高一は鳩にとびつかれて気をうしなってしまいました。
ミドリも高一も、まったくひどい目にあったものです。世界一のかしこい鳩だというが、それは、あのおそろしい電気鳩だったのです。鳩つかいにばけていたのは、にくいスパイ団長でありました。
高一は、ひやりとするつめたい風のおかげで、はじめて気がつきました。そこは、あのにぎやかに、かざりたてた見世物小屋のなかではなく、うすぐらい物おきのようなところでありました。
はっ、とおもっておきあがろうとして気がつきました。両手はうしろにまわされ、胸も腹もふといなわで、ぐるぐるまきにされていました。高一は、はがみをして、なわから手をぬこうとしたがだめです。
いったい、ここは、
前へ
次へ
全54ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング