め、
「さあ、たしかにこっちの箱には、世界一のかしこい鳩がはいり、こっちの箱には、かわいいお嬢さんがはいりました。ところが、私が気合《きあい》をかけますと、ふしぎなことがおこります」
 えいっと、気合をかけて、ミドリのはいっていた箱のふたに手をかけました。


   きえた妹


 鳩つかいはにやりと笑って、ミドリのはいっていた方の箱のふたをあけました。
「あっ」
 と、高一の口から、おどろきのこえがとびだしました。なぜといって、たしかにミドリがはいったにちがいないその箱のふたをとってみると、そこに、ミドリのすがたがないのです。そして、そのかわり金色のすじのある鳩がはいっているではありませんか。
「おやおやこれはふしぎ」
 と、鳩つかいはなおも、うすきみわるく笑いながら、
「お嬢さんが鳩にばけてしまいました。では、鳩の方は、なににばけているでしょうか」
 といってもう一つの箱のふたをとると、あらふしぎ、箱の中はからっぽです!
 ミドリは、いったいどこへいったのでしょうか。
「おじさん、ミドリを早くもとのようにかえしておくれよ」
 と、高一は、ぶたいにとびあがっていいました。
「あなた、
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