へ近づけました。
すると鳩は、鳩つかいの耳のなかを、くちばしでもって、ちょっちょっとつきました。
「ははあ、そうですか」
と、鳩つかいは、さもわかったような顔をして、見物人の方に向い、
「鳩さんが申しますには、このお嬢さんのおとしは十歳だそうです。お嬢さんあたりましたか」
ミドリは、ほんとうに自分のとしをあてられたので、おどろいてしまいました。見物人は、手をぱちぱちたたいて鳩をほめました。
「さあ、そのつぎはお嬢さんのお名前ですが、鳩さん、これはなかなかむずかしいが、あてられますか」
鳩つかいは、また耳を鳩にちかづけました。
すると鳩は、また鳩つかいの耳のなかを、くちばしでもって、ちょっちょっとつきました。
「ああそうですか。そこにぶらさがっている万国旗の右から三番目のいろ――というと……」
と、鳩つかいは、ぶたいにはりまわしてある旗をみまわしました。右から三番目は、ブラジルの旗でした。
「ああ、ブラジルの旗ですね。この旗のいろは青ですね。すると青子さんかしら」
すると、見物人はこえをそろえて笑いだしました。青子なんてめずらしい名だからです。
「青子はおかしい。もっと、は
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