んください。これが世界一のかしこい鳩です」
 鳩つかいは、長いむちでかごをたたきながら、二人の前にさしだしました。かごの中には、つばさの色がうす青色で、金のすじが二本とおっている鳩が、じっとこっちをみていました。
(あっ、電気鳩そっくりだ)
 と、高一は目をみはりました。
「さあ、これからこの鳩にお嬢さんのおとしや、名前までもあてさせましょう。お嬢さん、どうぞこちらへあがって下さい」
「だめだよ、ミドリ」
 と、高一はそれをとめました。しかし、鳩つかいは知らぬ顔をして、ミドリをぶたいにひっぱりあげ、みょうなだいにのせました。


   魔術師


 鎮守さまのお祭は、いま、おみこしがかえってきたので、村の人たちは、その方に気をとられて、わっわっというさわぎのさいちゅうです。
 こっちは、あまり見物人のはいっていない、電気鳩によくにた世界一のかしこい鳩をつかう、見世物小屋のなかです。印度《インド》服をきた鳩つかいに手をとられて、ミドリは、そのぶたいのうえにあがりましたから、兄の高一はなんだか、胸さわぎがしてなりません。
「さあ、鳩さん。お嬢さんのおとしは?」
 と鳩つかいは、耳を鳩のそば
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