》さまの秋祭の日がきました。いろいろの見世物《みせもの》やおもちゃの店がでて、たいへんなにぎわいです。高一は、ミドリをさそっておまいりにゆきました。
 やしろの前にならんだ二人は、ふといつなのついた鈴を、がらがらとふってお父さまが、ぶじにおかえりになるようおいのりをしました。それがすんでから、高一は、ミドリにいいました。
「ねえ、見世物のほうにいってみようよ」
「兄ちゃん、あれがおもしろそうよ」
 と、ミドリがゆびさしたのは、たくさんの見世物のなかにまじって、「ぽっぽ座」と、そめだした赤や青の旗をたてた小屋です。
「さあいらっしゃい。人間よりかしこい鳩の曲芸です。世界一のかしこい鳩です。坊ちゃん嬢ちゃん、さあさあおはやく……」
 と黒めがねをかけた男が、客をよんでいます。
 鳩ときいては、鳩のすきな二人は見たくてたまりません。二人はいそいではいりました。
 はいってみると小屋の中はがらんとしていました。見物人もほんのすこしです。
「へんだなあ」
 とおもったのですが、そのとき印度《インド》服をきた鳩つかいが、金ぴかの鳥かごを手にさげて、ぶたいにあらわれました。
「さあ、お目をとめてごら
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