。いそいでいってみると、ぴかりと光るもの――電気鳩です。マルにおいかけられています。
しかも、そのそばには、団長が黒い箱をせおってにげてゆきます。
「おいまてっ――」
と良太おじさんたちは、一生けんめいにおいかけましたが、ぬけ穴を出たところが、がけの下でした。スパイの団長は、そこにこしらえてあった、なわばしごをつたってがけの上にあがり、そして、そのなわばしごを上にひきあげてしまったものですから、いくら強い憲兵さんたちでも、がけをのぼることができません。
「ちえっ、ざんねんだ。もうひといきでつかまるところだったのに」
憲兵さんたちは、たいへんくやしがりました。高一もざんねんですが、はしごがなければのぼれないところだからしかたがありません。
こうして、電気鳩と、黒い箱をせおったスパイの団長とは、どこかへにげてしまいました。
その後、電気鳩はどこへいったものか、いっこうにみかけませんでした。
高一の鳩たちは、またもとのように小屋のまわりに、たのしくあそぶようになりました。
高一のお父さまも安心して、あらためて、大事なご用の旅におでかけになりました。
そのうちに、鎮守《ちんじゅ
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