いろ》の入墨《いれずみ》のように、無気味《ぶきみ》で、ちっとも動かない。また動くわけがないのだ、それだのに、けさ方《がた》、二時二十分にあの電気看板が、ほんの一秒間ほどパッと消えちまったのだ。そのあとは又元のように点《つ》いていたが……。停電なら、外《ほか》に点《とも》っている沢山の電燈も一緒に消えるはずじゃないか。ところが、パッと消えたのはここの電気看板だけさ。二時二十分にふみちゃんが殺される。電気看板がビクリと瞬《またた》く――気味がわるいじゃないか。僕は、はっきり言う。あの電気看板には神経があって、人間の殺されるのが判っていたのだ。そして僕にその変事《へんじ》を知らせたのに違いないんだ。あんな怖ろしい電気看板は、今日のうちに壊してしまわなくちゃいけない」
「オーさん、そのことは黙っていた方がいいことよ」とこの話をきいてから死人のように真蒼《まっさお》に[#「真蒼《まっさお》に」は底本では「蒼蒼《まっさお》に」]なっている鈴江が、皺枯《しわが》れた声を無理に咽喉《のど》からはき出すようにして叫んだ。「その話はオーさんの挙動に、ある疑いを起させるばかりに役立つわ。あたいは、なにもかも
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