ど》ふみちゃんが殺された時間だ」
「オーさん。あんた知ってんの、言ってごらんなさい。言ってよ、なにもかも、さ早く」
「いや、怖ろしいことだ。君、このカフェ・ネオンの三階に懸《か》かっている電気看板は、ただの電気看板じゃないんだぜ。あいつは生きてる! 本当だ、生きてる。あの電気看板には人間の魂がのりうつっているのに違いないんだ。きっと、あいつ[#「あいつ」に傍点]だ」
「なにを寝言《ねごと》みたいなことを言ってんのよ。早くおきかせなさいな、けさがた、あんたの見たということを……もしかしたら、オーさんは、けさがた此処《ここ》の家へ……」
「あの電気看板は、早く壊《こわ》してしまうがいいぞ。おい、すうちゃん、あの電気看板はいつも桃色の線でカフェ・ネオンという文字を画《えが》いている。あれは普通の仁丹《じんたん》広告塔のように、点《つ》いたり消えたり出来ない式のネオン・サインなのだ。そしてあの電気看板は毎晩、あのようにして点けっぱなしになっている。僕んち[#「んち」に傍点]はここから十三丁も離れているが、高台《たかだい》に在るせいか、家の屋上からあのネオン・サインがよく見える。それは朱色《しゅ
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