み子の肩のところに貼ってある万創膏《ばんそうこう》について生前《せいぜん》ふみ子が、おできが出来たとか、傷が出来たとか言っていなかったかという質問である。鈴江は知らないと答えた。同じ質問が次にお千代に発せられた。お千代は細い引き眉毛《まゆげ》をしかめながら何か思い出そうとしているようだったが「ふうちゃんの首のところには、おできも傷もなかったようですわ、あの日のおひるっころ、ふうちゃんと蛇骨湯《じゃこつゆ》へ一緒に入ったんですがそのときお互様《たがいさま》に、洗《なが》しっくらをしたんですのよ。わたしはふうちゃんの首のところに小さい黒子《ほくろ》があるのを見付けたものですから、ちょいとおイタをしてやれと思ってふうちゃんの頸《くび》んとこをギュウギュウこすってやったんです。ふうちゃんは、あんたいたいわよ、血が出るじゃないのといいましたから、でもこの小《ちい》ちゃい黒子が、どうしてもとれやしないのよと言って笑ったんですの、そのときによく注意していたと思いますが、別に傷もおできも見えなかった、ような気がしますけれど……」と陳述《ちんじゅつ》した。清子、かおる、とし子の三人も知らないと、順々に答
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