すると、壁が、どしんと、下に落ちた。向うの部屋が、見とおしになった。
 向うの部屋は、まるで幅の広い階段に、人間の首を植たように、二十近い首が並んで、こっちを向いていた。そして、一せいに、目をぱちぱちとやった。それは、元帥に対する敬礼であったのだ。
「やあ」
 と、元帥は、ゆったりした言葉で、答礼をした。
「では、諸君。会議をはじめる」
 と、元帥は、開会を宣した。階段に生えたたくさんの首と会議をはじめるなんて、変な光景であった。
 そのたくさんの首は、いずれも薄眼《うすめ》をひらいて、元帥の言葉を、しずかに待ちうけているようであった。
 そのとき、突然、また例の副官の声が、聞えた。
「長官に申上げます。只今、第四参謀が盲腸炎で入院し、直ちに開腹手術をいたしますそうです」
「なに、第四参謀が……」
「そうであります。それで、第四参謀は会議を失礼したいと、申して参りましたがどういたしましょう」
「盲腸炎なら、仕方がない。会議から退いてよろしいが、彼に、よくいって置け、盲腸などは、子供のとき取って置くものじゃ。つけて置くから、折角の重要会議に役に立たんじゃないかといっておけ」
「はい。
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