時のことであったが、ラヂウム元帥の自室はさんさんと白光があたって、春のような暖かさであった。
「うむ、あと一時間すると、わしは家内と食事をすることになっているから、それまでに、会議を片づけてしまわないと困るんだ。じゃあ、早く階上へやってくれ」
「はい、では会議のあります第十九階へ、移動いたします」
「うむ、早くやれ!」
 元帥は、椅子にふんぞりかえったまま、副官に対し、早く第十九階の会議室へやれと、いそがした。昔の人が、この会話をきいたら、元帥は気がちがっているのだと思うであろう。椅子に根の生《は》えたように腰を下ろしながら、早くやれといっても、やりようがないではないか。
 いや、そうでもない。やりようはたしかにあるのだった。なぜなればとつぜん元帥の机上にある電気時計のような形をした段数計の指針が、二十四のところから、二十三、二十二と、数のすくない方へうごきだした。
 階数が、だんだん減っていくのだ。ということは、元帥のいる部屋が、まるでエレベーターのように、上へのぼっていくのであった。もちろん、ここは地下建築なのであるから、上へいくほど、階数は減る。として、ついに第十九階へのぼった。
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