んだぞ」
「はあ」
声の終るか終らないうちに、スターベア大総督の前の、別のスクリーンのうえに、キンギン国大使ゴールド女史の居間がうつりだした。
女史は、只一人居間にいて、テーブルのうえで、なにか丸いものを、しきりにいじくりまわしている。
「おい、大使は、何をいじくりまわしているんだ」
と、大総督が、スクリーンの中のハヤブサに訊《き》いた。
「えへへへ。女大使が手に持っていますのは、彼女の例の義眼でございますよ」
「なに、義眼? ああ、そうか。義眼を手に持って何をしているのかね」
重大報告
ここは、大洋を距《へだ》てたキンギン民主国であった。
「長官。では、幕僚会議の準備ができましたから、どうぞ」
「おお、そうか」
戦争長官ラヂウム元帥《げんすい》は、自分の机のうえに足をあげて、動物漫画の本を読んでいたが、ここで、残念そうに、ぱたりと頁《ページ》を閉じた。
「一体、今は、何時かね」
「ちょうど、十三時でございます」
声はするが、副官の姿は見えない。その声は、机の上においた水仙の花壜《かびん》の中から、聞えてくるのであった。花壜の高声器だ。
十三時というと、午後一
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