を閉じて考えていたが、やがて、ぽんと膝をうち、司令官ハヤブサの耳に口をよせると、
「おい、それはキンギン国の仕業《しわざ》にちがいないと思うぞ。お前は、直《すぐ》に秘密警察隊を動員してキンギン国の大使ゴールド女史をはじめ、向うの要人の身辺を警戒しろ」
「はい。かしこまりました」
「わしは、すぐさま戦争大臣に命令を発して、問題の第一岬要塞の南方十キロの洋上を中心として、附近一帯を警備させるから」
「ははっ、それは結構でございます」
「わかったら、早く行け」
「はっ」
「ちょっとお待ち、ハヤブサ司令官」
 そういったのは、トマト姫だった。司令官は、立ち上りかけたところを、トマト姫によびとめられ、またその場に跼《かが》んだ。
「はい、なにごとでございますか、お姫さま」
「あのう、ゴールド大使の左の眼が、義眼だということを、あなたは知っているの」
 トマト姫は、とつぜん、意外なることをいいだした。
「えっ、それは初耳です。そうでございましたか、あのうつくしい女大使ゴールド女史の左の眼が義眼とは、今まですこしも気がつきませんでした。ははあ、女というものは油断が……」
 といいかけて、司令官は気が
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