、トマト姫。お前はいい子だから、あっちへいって、レビュウを見ていらっしゃい。お父さんは、今、ハヤブサ司令官と大事なご相談をしているときだから、あっちへいらっしゃい」
「いいのよ、お父さま。あたし、もう黙っているからいいでしょう。猫のお話が出ても、鼠のお話が出ても、なんともいいませんわ」
トマト姫は、そういいながら、大総督の膝の間へ小さなお尻を入れ、絨毯《じゅうたん》のうえへ座りこんでしまった。
「どうも、困った奴じゃ」
と、大総督はいったが、眼に入れても痛くないほど可愛がっているトマト姫のことだから、そのうえ叱りはしなかった。彼は、司令官の方をむいて、
「おい、ハヤブサ。お前も、ちと常識のある話をしてくれ。海の中に、猫だの鼠だのがいるような話をしては、娘に笑われるではないか」
といえば、司令官は、眼を白黒して、
「いや、これはうっかりしておりました。何分にも、一刻も早くお知らせしなければならないと思い、それがため、つい周章《あわ》てましたようなわけで……」と弁解して「さて、閣下。今申した怪信号の事件について、閣下はいかなるお考えをお持ちでございましょうか」
大総督は、しばらく眼
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