しなされ、歴史を。今度の世界戦争以来、わがイギリスが援助をすると申入れた先の国で、滅びなかった国があるかね。ベルギーを見よ、和蘭《オランダ》を見よ、チェッコを見よ、ポーランドを見よ、それからユーゴを見よ。ギリシヤを見よ、蒋介石《しょうかいせき》を見よ。だから、われわれイギリスが、『ドイツよ、お前を助ける』と申入れただけで、ドイツも亦《また》、滅びざるを得ないであろう。これ、歴史上の事実から帰納《きのう》した最も正確にして且つ安全な作戦じゃ」
仲々一座の納りがつかないので、ゴンゴラ総指揮官は、席を立って、金博士のところへやって来た。
「金博士。吾輩の切なるお願いである。新奇なる兵器を作って、わがイギリスの沿岸《えんがん》から発し、独本土へ上陸せしめられたい」
このとき、金博士は、ようやく卓上の料理を悉《ことごと》く胃の腑《ふ》に送り終った。博士は、ナップキンで、ねちゃねちゃする両手と口とを拭《ぬぐ》いながら、
「ああ余は遠く来た甲斐《かい》があったよ。ほう、美味《びみ》満腹《まんぷく》だ。はて、何といわれたかね」
と、取り済ました顔である。
「おお金博士。今も申すとおり、吾輩の切な
前へ
次へ
全24ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング