ゴラ将軍は、幸《さいわ》いにして飛行機の操縦が出来ないから、安心してよろしい」
ゴンゴラ総指揮官は、頬をトマトのように赧《あか》くして、卓《たく》を叩《たた》いた。
「何人《なんびと》が何といおうと、独本土上陸作戦を決行する吾輩の決意には、最早変りはない。ドイツを屈服《くっぷく》せしめる途は只《ただ》一つ、それより外に残されていないのである」
一座は、尚も喧々囂々《けんけんごうごう》、納《おさ》まりがつかなくなった。あちこちで、同志討《どうしうち》までが始まる。
「なにも、そんな危い芸当をやらないでも、もっと確実に、しかも安全にドイツをやっつける方法があるんだ」
「そんなことはないでしょう。自分は総指揮官の作戦に同意する」
「それは愚劣《ぐれつ》きわまる。よろしいか。わしの考え出した作戦というのは、至極《しごく》簡単明瞭《かんたんめいりょう》である。それは、ドイツに対して『わがイギリスは貴国を援助するぞ』と申入れれば、それでよろしいのじゃ」
「なんだ、それは。敵国ドイツを助ければ、わがイギリスはいよいよ負けるばかりだ」
「それだから貴公《きこう》は、駄目だというんだ。ちと歴史を勉強
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