えんぎ》でもない)
 将軍は、ちょっと顔を曇らせたが、胸の前で十字を切って、
「それは外でもない。十三――いや、諸君、愕《おどろ》いてはいけない。吾輩《わがはい》は、ここに極秘の独本土上陸作戦《どくほんどじょうりくさくせん》を樹立《じゅりつ》しようと思う者である」
 一座は、俄《にわ》かにざわめいた。将軍のなかには愕いて、手にしていた盃《さかずき》を取落とす者もあり、嚥《の》み下ろしかけていた若鶏《わかどり》の肉を気管《きかん》の方へ送りこんで目を白黒する者もあった。ただ平然として色を変えず、飲み且《か》つ喰《くら》う手を休めなかったのは金博士ばかりだった。
「独本土上陸作戦、それは英《えい》本土上陸作戦の誤植《ごしょく》――いや誤言《ごごん》ではないか」
「否《いな》、断じて、独本土上陸作戦である」
「ほほっ、ゴンゴラ総指揮官の精神状態を医師に鑑定せしめる必要ありと思うが、如何に」
「いや、もう一つその前に、全国の空軍基地に対し、単座戦闘機《たんざせんとうき》にゴンゴラ将軍を搭乗《とうじょう》せしめざるよう厳重《げんじゅう》命令すべきである」
「その必要はあるまい。なぜといって、ゴン
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