》といったじゃないか。お前さんがたのここんところは、連日連夜のドイツ軍の空爆で、だいぶん焼きが廻っていると見える」
 そういって、金博士は、自分の頭を、防毒マスクの上から、こつこつと叩いてみせた。


     2


 ロンドンの地下ホテルの大広間で、国防|晩餐会《ばんさんかい》が催《もよお》されている。
 その大広間は、一見《いっけん》ひろびろとしていた。ただ真中のところに、一つの卓子《テーブル》と、それを取囲む十三の椅子とが、まるで盆の真中に釦《ボタン》が落ちているような恰好《かっこう》で、集っていた。そして卓上には、贅沢《ぜいたく》な料理が、大きな鉢に、山の如く盛り合わされ、そしてレッテルを見ただけで酔っぱらいそうな古いウィスキーやコニャックが、林のように並んでいた。
 そのとき、広間の北側の扉《ドア》が、さっと左右に開いて、金ぴかの将軍が十二人と、それから肘《ひじ》のぬけそうな黒繻子《くろじゅす》の中国服を着た金博士とが、ぞろぞろと立ち現れて、その設《もう》けの席についた。
「さあ、ぼつぼつ始めましょう」
「各自、お好きなように、セルフ・サーヴィスをして頂きましょう」
 ボー
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