「でも、吾輩は総指揮官……」
「総指揮官とて信用は出来ない。とにかく余は貴官と約束したところに従い、現実に独本土上陸をやって見せた上で帰国しようと思う。百の議論よりも、一の実行だ。実績を見せれば、文句はないじゃろう」
「なるほど。すると博士御発明の独本土上陸用の新兵器は、目下|続々《ぞくぞく》と建造《けんぞう》されつつあるのですな」
 ゴンゴラ将軍の瞳が燿《かがや》いた。
「その建造は、二週間前に終った。それから、搭乗員《とうじょういん》の募集にちょっと手間どったが、これも一週間前に片づき、目下《もっか》わが独本土上陸の決死隊二百名は、刻々《こくこく》独本土に近づきつつあるところじゃ。これだけは話をしてやってもええじゃろう」
「人員二百名は少いが、とにかく刻々独本土に近づきつつあるとは快報です。大いに期待をかけますが、果してうまくいくですかな」
「なにしろ、独本土へ上陸しようというイギリス軍人の無いのには愕《おどろ》いた。折角《せっかく》作ったわが新兵器も、無駄に終るかと思って、一時は酒壜の底に一滴《いってき》の酒もなくなったときのような暗澹《あんたん》たる気持に襲われたよ」
「しか
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