た普通の潜水艦艇では、機雷《きらい》にぶっつけるかもしれないし、警報装置に引懸《ひっかか》って所在が知れるし、どうもよくない。そこでこの渡洋潜波艇は、海面とすれすれの浅い水中を快速で安全に突破するもので、つまり水上と防潜網との隙間《すきま》を狙《ねら》うものである」
「ほう、素晴らしいですなあ」
「しかし、これは試作しただけで、余は取り捨てたよ」
「おや、勿体《もったい》ない。使わないのですか」
「駄目じゃ。やっぱり相手方に知れていけないのじゃ。つまり海面と防潜網との隙間を行くものではあるが、こいつを何千何万|隻《せき》とぶっ放すと、彼岸《ひがん》に達するまでに、彼我《ひが》の水上艦艇に突き当るから、直《ただ》ちに警報を発せられてしまう。従ってドイツ本土上陸以前に、殲滅《せんめつ》のおそれがある。これはやめたよ」
「惜しいですなあ。すると、これは取りやめて、以来《いらい》自暴酒《やけざけ》というわけですか」
「とんでもない。余はイギリス人とは違うよ。余は既に、ちゃんと自信たっぶりの新兵器を作った」
「それは、どういう……」
「莫迦《ばか》。現行兵器の機密が、他人に洩《も》らせるものか」
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