、元来た扉《ドア》から出ていってしまった。
「さあ、もう一杯、いきましょう」
「すこし廻りすぎたが、もう一杯頂戴するか」
 あとは二人が水入《みずい》らずで向い合った。
 金博士は、そのとき顔を将軍に近づけていった。
「今誓約したことは、必ずやります。しかし一体、独本土へ上陸といって、どこへ上陸すればいいのかな。ブレーメンかキール軍港《ぐんこう》のあたりまで行かなければ満足しないのか、それともドイツの占領地帯で、お手近《てぢ》かのドーヴァ海峡《かいきょう》を越えて旧《きゅう》フランス領のカレーあたりへ上陸しただけでも差支《さしつか》えないのか、一体どっちを望むのかね」
 金博士に大きく出られて、ゴンゴラ総指揮官は、碧《あお》い目玉をぐりぐり廻わし、
「どっちでも結構ですが、一つ早いところ上陸して貰いたいですねえ。ドイツ兵のいる陸地へ、こっちからいって上陸したということになれば、そのニュースは、ビッグ・ニュースとして全世界を震駭《しんがい》し、奮《ふる》わざること久《ひさ》しきイギリス軍も勇気百倍、狂喜乱舞《きょうきらんぶ》いたしますよ」
「狂喜乱舞するかな。それはどうかと思う」
「いや
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