しているようなことをいう。
 博士は、別段困った顔もせずに肯《うなず》き、
「わしのところには、どんなものでもあるよ。今お前のいった防毒面をどんどん通して、今までの防毒面じゃ役に立たない毒瓦斯があるがこれはどうじゃ」
「それはいいですなあ。しかしそれは○○○、○○○○○じゃないのですか」
「ほう、それを知っているか。この種のものはドイツと○○だけが持っているので、従来の防毒面ではまるで防ぐ力がない」
「しかし博士《せんせい》、それも駄目ですよ。なぜといって、他の国には無いかもしれないが、ドイツなどには、その超毒瓦斯《ちょうどくガス》を防ぐ仕掛をちゃんと持っている。そういう防ぐ手段のあるものは全然駄目です。私は、全然防ぐ用意のない毒瓦斯が欲しいのです。博士、ぜひお力をお貸しねがいたい」
 醤は、熱心を面《おもて》にあらわしていった。
「ほうほう、だいぶん熱心じゃが、それもあるにはある。しかしこれを教えるには、大分|高価《こうか》につくが、いいかね。まずウィスキーならダース入《いり》の函単位《はこたんい》でないと取引が出来ないが……」
「ダース函でも何でも提供しますとも」
「ほい、お前にも
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