似合わん、えらく気が大きいじゃないかい」
「博士《せんせい》、わしの報復《ほうふく》成《な》るかどうかという瀬戸際《せとぎわ》なんです。あに真剣にならざるを得《え》んやです」
「そうか。なら、よろしい。ちょっとここに出してみようか」
「あ、待ってください。それはあぶない。ここで出されたんでは、私が死んでしまうじゃないですか。そればかりは遠慮します」
「なにをうろたえとるか。出すといっても、本当の毒瓦斯を出すとはいっておらん。こういう毒瓦斯があるという話をしようかという意味でいったのじゃ」
「ああ、そうでしたか。やれやれ安心しました。とにかく博士《せんせい》と来たら、興《きょう》が乗れば、敵と味方との区別なんかもう滅茶苦茶《めちゃくちゃ》で、科学の力を残酷《ざんこく》に発揮せられますからなあ。これまでに私は、博士のそのやり方で、ずいぶんにがい体験を経《へ》て来たもんです」
「醤よ、科学は残酷なものじゃよ。わしはそう思っとる。だから人間は出来るだけ早く科学を征服しなければならないのじゃ。ドイツに於ては――」
「博士、ドイツの話はもう沢山です。それで私のお願いは、ここに立っている腹心《ふくし
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