毒瓦斯発明官
――金博士シリーズ・5――
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蒸《む》し暑《あつ》い
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)発明王|金博士《きんはかせ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)きゃあ[#「きゃあ」に傍点]
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蒸《む》し暑《あつ》い或る夜のこと、発明王|金博士《きんはかせ》は、袖《そで》のながい白服に、大きなヘルメットをかぶって、飾窓《かざりまど》をのぞきこんでいた。
南京路《ナンキンろ》の雑沓《ざっとう》は、今が真盛《まっさか》りであった。
金博士の視線は、さっきから、飾窓の小棚《こだな》にのせられてある洋酒の群像に釘《くぎ》づけになっている。いや、正しくいえば、その洋酒の壜《びん》にぶら下げられた値段札の数字に釘づけになっていたという方がいいだろう。
「あはは……」
博士がとつぜん声をあげた。これは決して博士が笑ったのではない。実は大歎息《だいたんそく》をしたのである、あははと……。およそ歎息というものは、感極《かんきわ》まってその窮極に達すれば
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